鉄鋼の表面を硬化し、機械的性質を向上させる方法の1つにアンモニア(NH)窒化法がある。この方法の歴史は古く『鋼への窒素の影響、特に表面硬化現象』(A・Fry)の研究発表が行われ、すでに60余年が過ぎている。
わが国では昭和30年以降、欧米からの工作機械、産業機械に関する製造技術の導入が進むにつれてこの窒化法の需要が著しく伸びたが、一時期、公害問題、表面層の脆化問題、処理時間が長い、硬化層が浅いなどの理由で利用度の減少傾向が見られた。しかし近年、機械加工技術の進歩や前述の欠点を改良した窒化処理法、即ちイオン窒化法、酸窒化法、当社が開発したガス軟窒化法など下記に示す様な大きな特徴をもつ新しい処理が発表され金属表面処理法としてのガス軟窒化の利用が見直されはじめている。

従来のガス軟窒化法は、ポット(処理炉のレトルト)内に清浄した処理品をセット後、500〜570℃に加熱し、NH+RXガスをポットに流す。
窒化処理の制御は排気中の残留NHを測定することにより行っていた。残留NH量と窒素ポテンシャルの関係について実験を行った結果、残留NHは窒化制御の目安になるが、窒化速度を決める処理表面の窒素濃度(ポテンシャル)との関係はさほど深くなく、ポテンシャルを低下させる因子はNHが分解した時に発生する水素ガス(H)であり、このHが処理表面に吸着しNの浸透を阻害することが判明した。
当社のガス軟窒化法は、NH+N+COにより、この、Hとポテンシャルの関係を制御し、高品質なガス軟窒化処理を行う方法である。

 

ガス軟窒化処理の特徴
1. 変形
  窒化処理温度は、500℃〜570℃の低温なので変形はほとんどない。
2. 特長
  薄物及び形状複雑品の表面硬化、乳白色の仕上がり、耐磨耗性、耐蝕性、耐カジリ性が向上する。
3. 耐熱性
  浸炭処理品は200℃前後で硬度の軟化が始まるが、窒化処理品は600℃に加熱されても軟化しない

1. 窒化前の熱処理条件
  処理品に鋳鍛造、熱処理、機械加工等の残留応力が残っていた場合、窒化温度でその応力が開放さ
  れ変形を起こすことがある。窒化温度より30℃〜50℃高い温度で歪取焼鈍(調質の場合焼もどし)
  を行うことが望ましい。
2. 処理条件
  処理温度、時間、ガスの種類によりいろいろな特性が得られ、表面硬度を高くしたい場合、若干表
  面硬度が下がっても実用硬化層が欲しい場合等、それぞれ目的に合せた処理ができる。
3. 材質
  (A)材質により窒化されやすいものと、されにくいものがある。Al、Cr,Mo、Ti、など窒
     素との親和力のある合金元素を含む材質が望ましい。
  (B)二次硬化鋼(SKD11等)は二次硬化温度以下で処理する。(金型用鋼)
  (C)析出硬化型鋼は、析出硬化熱処理とガス軟窒化を並行して行う場合と析出硬化熱処理温度以下
     で行う場合(母材の靱性重視)がある。